橋面舗装の仕様について
橋梁補修設計を行う上で、橋面防水と舗装の打替えを計画することが多い。
群馬県においては、「道路橋計画・設計要領(H28県土整備部)」に基づいて計画を行うのが慣例であるが、橋面舗装に使用する合材種類は、基準書によってまちまちである。
以降に、各基準書による橋面舗装の仕様と、目的・意図について考察する。
1)道路橋床版防水便覧 H19.3 日本道路協会 p.9
・水密性を考慮し、表層に密粒アスコン、基層に密粒アスコンを例として挙げている。
※基層のアスコンは、水密性を考慮し、粗粒より密度の高い密粒を採用している。
2)道路橋床版防水ガイドライン(案) 2012.6 土木学会 p.77
・水密性を考慮し、表層に密粒アスコン、基層に密粒アスコンを例として挙げている。
※基層のアスコンは、水密性を考慮し、粗粒より密度の高い密粒を採用している。
3)設計要領(舗装及び排水施設等) H10 国土交通省関東地方整備局
※図中の改A②とは、改質密粒アスコン、A②とは密粒アスコンを示す。
・表層に改質密粒アスコン13mmトップ、基層に密粒(場合により改質)アスコン13mmまたは20mmを採用している。
・基層のアスコンは、水密性を考慮し、粗粒より密度の高い密粒を採用している。
・動的安定度は目標値2500回/mm、最大でも4000回/mmとある。これは、わだち掘れに対する安定性は必要だが、硬すぎても床版の挙動に追従できずにひび割れ等が発生することを懸念していることを意味している。
4)道路橋計画・設計要領 H28.11 県土整備部
・重交通路線は、表層でも密粒20mmを用いている。わだち掘れ対策として、粒径の大きなアスコンを使用することで骨材のかみ合わせ効果に期待している。
・基層は粗粒度アスコン(20)を用いている。他基準は密粒アスコンを用いているなか、あえて粗粒度を用いているのは、これもわだち掘れに対する耐久性を重視している。
・他の基準書に比べ、床版挙動の追従性、床版防水上の水密性に対しては、あまり見えてこないように思われる。
5)粒度についての考察・総括(車道舗装)
基準書籍名 | 発行元 | 表層種類 | 基層種類 | 摘 要 |
道路橋床版防水便覧 | 日本道路協会 | 密粒度アスコン | 密粒度アスコン | 防水性・水密性を重視している。 |
道路橋床版防水ガイドライン(案) | 土木学会 | 密粒度アスコン 細粒度アスコン | 密粒度アスコン | 防水性・水密性を重視している。 |
設計要領(舗装及び排水施設等) | 国土交通省関東地方整備局 | 密粒度アスコン (改質) | 密粒度アスコン (ストアス・改質) | 防水性および耐塑性変形性を考慮している。 |
道路橋計画・設計要領 | 県土整備部 | 密粒度アスコン (改質) | 粗粒度アスコン (改質) | 耐塑性変形のみを考慮している。 |
・県土整備部の基準書は、わだち掘れへの耐久性を重視し、基層に粗粒度アスコンを用いている。
・県土整備部以外の基準書は、防水性・水密性を重視し、基層に密粒度アスコンを用いている。
●ここで、橋面舗装にもちいるアスコンに求められる性能を考えてみる。
①床版(上部工)は挙動する。よって、挙動に追従するしなやかさが求められる。
・アスコン層が固すぎたり、密度が小さい(空隙率の大きな)場合は、床版の挙動で舗装にひびわれが生じやすい。→動的安定度DSの基準を設定する。
②通常の砕石路盤上とは異なり、橋面舗装の場合、アスコン層の直下層は固いコンクリートであるので、輪荷重による塑性変形(わだち掘れ)が生じやすい。
・アスコン層が柔らかすぎれば、輪荷重の影響は砕石路盤よりも大きく、舗装にわだち掘れが生じやすい。→改質Ⅱの使用、もしくは20mmトップとする。
③床版防水の観点から、水密性が必要である。
・床版内に雨水浸透を避けたいので、アスコンの配合は、可能な限り密度の高い(水密性の高い)ものが求められる。→密粒Asを使用する。
●総括
橋面舗装に用いるアスコンは、水密性が高く、床版の挙動に追従し、かつ、わだち掘れの生じにくい塑性変形抵抗性の高いものが求められる。
表層は、大型車の多い場合は改質密粒アスコン(13)、少ない場合は密粒アスコン(13)が有効。
基層は、大型車の多い場合は改質密粒アスコン(20)、少ない場合は密粒アスコン(20)が有効。
※注意点
最大骨材粒径については、施工の確実性の観点から、仕上がり厚に応じて下記の注意が必要。