橋梁の塗替えについて
令和3年4月1日付で、県道路整備課から「群馬県鋼道路橋部分塗替え計画・設計要領」の通知があった。
従来の鋼橋塗替えは全面塗替えを基本としていたところを、コスト縮減のため、桁端部などの腐食環境が著しい部分だけを塗替えることを基本とするというものである。
ここで、ちょっとややこしいのが有害物質を含む塗膜がある橋の場合である。
以下に、①PCBが含有している場合と、②鉛が含有している場合について考察する。
①既存塗膜にPCBが含有している場合
「鉛等有害物を含有する橋梁塗装塗替取扱要領」(県道路管理課 令和2年2月)においては、「有害物質(PCB)を含有する塗膜は除去することとする。」とある。
PCBが含まれている場合は、PCB特別措置法で平成39年度までに処理することが義務つけられていることから、事実上全面塗替えとなることが想定される。
(※土研資料第4354号 土木鋼構造物用塗膜剥離剤ガイドライン(案)改定第2版 p.5)
「群馬県鋼道路橋部分塗替え計画・設計要領」においては、部分塗替えではなく全面塗替を行おうとする場合には、その理由を明確にし、主管課と協議の上で採用しなければならない。と記載されていることから、このような場合は協議が必要となる。
■総括
・既存塗膜にPCBが含有している場合は、「群馬県鋼道路橋部分塗替え計画・設計要領」に基づき、主管課と協議を行い、全面塗り替え(湿式工法によるRc-Ⅰ相当)となる。
②既存塗膜に鉛が含有している場合
「群馬県鋼道路橋部分塗替え計画・設計要領」は、現行の最新版は令和2年2月版(第4回改訂版)であるが、令和元年11月版(第3回改訂版)から、下記のとおりPCB以外のみを含有する塗膜の扱いが大きく変わっている。
「群馬県鋼道路橋部分塗替え計画・設計要領」改訂履歴抜粋
要約すると、塗膜成分検査の結果、PCB含有がNGだった場合は、なにがなんでも現況塗膜を全面除去するが、鉛含有のみがNGだった場合は、ただちに全面除去しなくてもOKということが記載されている。
しかしながら、鉛の有害性については厳しい規制があり、鉛を含む塗膜の除去作業および素地調整作業を行うとなれば、含有量にかかわらず鉛中毒予防規則の適用を受ける。
また、厚生労働省からの通知である「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」によると、塗膜除去をするとなれば、湿式工法によって剥離を原則としている。
さらに、土木鋼構造物用塗膜剥離剤ガイドライン(案)改定第2版によると、鉛・クロムのみ有害物を含む場合でも、剥離剤およびブラスト工法等にてしっかりと除去することとなっている。
つまりは、いざ塗り替える時期となった場合は、1種ケレン相当の塗膜除去を行うこととなり、塗装系もRc-Ⅰとなることが予想される。(既存塗膜の活膜を残す3種ケレンは該当しない。塗装系もRc-Ⅲは該当しない。)
(※土研資料第4354号 土木鋼構造物用塗膜剥離剤ガイドライン(案)改定第2版 p.7抜粋)
■総括
・既存塗膜に鉛が含有している場合は、「群馬県鋼道路橋部分塗替え計画・設計要領」に基づき、桁端部などの腐食環境が著しい部分だけを優先して塗替える。(湿式工法によるRc-Ⅰ相当)
・桁端部等以外の部分は、ライフサイクルコストを検討して塗替え時期を決定する。塗替え工法は、3種ケレンだと鉛混じりの有害塗膜層を除去できないことと、有害塗膜が飛散するおそれがあるので不採用となる。(おのずと湿式工法によるRc-Ⅰ相当となる。)